粋の研究3

以前、対談の際に相手の年上の女性から、
「木村さん、何を着ていらっしゃる?」
と聞かれた。その対談は彼女がセットしてくださったものだったので、
私は彼女を立てたいと思い、持っている服の中で非常に地味なものを着ていくことにして、その内容を事細かにお伝えした。
写真に写った時、彼女のほうが華やかに写ればいいなーと心から願ったからである。

撮影を伴った対談当日、ドアを開けた途端、お互いがお互いを見て、
「おっ」と小さく叫んで指差しあった。
「こんなにぴったし、同じ色ってあるかしら?」
というほど、二人の服の色がかぶっていたのである。
なんとなぁ・・・・。いやはや、驚いた。この時、二人が着た服はレンガ色だった。さんざんお伝えしたはずだったのに、悪いことをした。言葉で伝えるというのはかくも難しいものである。

「さて、何着ていこう?」とため息ついて、思案して、義理で会わなければならない相手が待つ場所に赴いた。この時も見事にかぶった。相手も私も黄色のカットソーに黒のスカートだった。それを見て、「なるへそ、彼女も私と同じ思いでここに来たんだな」と分った。

私が尊敬している舞踊家のK先生はゲストに先輩女性を迎えるとき、本当に自分はさりげない色の服を着る。舞台を見ているとK先生がゲストの女性を立てようとしているのがひしひしと伝わってくる。計算しつくされた衣装構成なのだ。

しかし、ご自分のリサイタルの時は、しょっぱなから「さあ、今日の私は炸裂するわよ!」という意気込みが熱く伝わってくる血赤のドレスで登場したりする。粋な人である。

そのK先生から司会を頼まれたとき、どんな服を着ていくべきか思案した。k先生はおそらくこんな衣装で登場するはず、と推定して自分の衣装を決める。蓋を開けてみるとかぶらないで先生を立てることができた。

よく人徳を積みなさい、ということを耳にするが、相手を立てる服の着方。それに配慮することも徳の一つかなと思う。自分が着たい服ではなく、相手から見て、感じのよい服の選び方を上手に出来るようになりたいものだ。

by yoshi-aki2006 | 2006-04-10 00:59 | 人間考察 | Comments(0)  

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