なんちゃってプロ

「私の頭、スイカじゃないんだけど」
「はっ????」
「そんなにごしごし洗ったら痛いわよ」
「す、すみません」
「もうお流し終えちゃうの? 耳の後ろを見てみなよ。泡が溜まっているから。ちゃんと流してね」
「耳の後ろをタオルでごしごししごくと痛いよ。耳の後ろの皮膚って薄いからね」
「シャワーヘッドを頭蓋骨にゴンゴン当てないようにね。客を脳震盪で殺すよ」

シャンプー台に仰向けになった客(私)から、ビシバシいわれて、美容師のタマゴは
「オッ、困った困った」状態になる。

シャンプーする人がよそ見しているのから小さなあくびをかみ殺すのまで、客は目をつぶっていてもみんなお見通しだ。教室や講演会で聞き手は自分一人くらい何をしていても講師に分るまいと思う。しかし、一度、演台に立ってみると全ての人が見渡せ、一人一人が何をしているかが手に取るように分かる。あれと同じで、目を閉じている客には、洗い手の動静は全て、バレバレである。人間は目がふさがれていても相手が何をしているかがわかるようになっている。

伸びる人はすぐ分る。こちらが何をいわんとしているかパッと掴み、
「こうですか? どうでしょうか?」
と、どうやったら客が満足するか、いろいろ工夫してみせる。こういう人はクレーマーをロイヤルカスタマーにしてしまう。客がつかなければどんな商売もやっていけない。だから、こういう人はいつかきっとヒトカドの人になる。

伸びない人はいわれた途端、固まって萎縮したり、口ではすみませんとか言っているが、うるさい客が帰ると、「ったくー、やんなっちゃうよ」てなことをいって、口と心が分離している人だ。
何をやっても自分が勝り、客商売には向いていない。こういう人は働き者の配偶者か親におんぶにだっこになり、生涯、自立は難しい。客商売に向かなければ、資本主義社会で食べていくことはできない。

美容師のタマゴに限らず、最近、「なんちゃってプロ」がすごく多い。
なんちゃってデザイナー。なんちゃってエステシャン。なんちゃって先生。
なんちゃって社員。
いっちょ前にプロ風に構えているが、とても人からお金を頂戴できる技術じゃない。
客側が逆に我慢料としてお金をもらいたいような仕事師。それを本人だけが分っていない。

なんちゃってプロは料金ドロボーと同じだ。
他山の石、人のフリ見てわがフリ直せで気をつけたい。

付け加えれば、相手が真剣に「ちゃんとやろう」と気合を見せ、首尾よくできたときには思い切り誉め、時にはチップをバーンと弾もう。それがプロを育てる客の務めである。
文句を言うだけでは客も「なんちゃって客」に過ぎない。

by yoshi-aki2006 | 2006-05-04 07:32 | 事象観察 | Comments(2)  

Commented by JDTA 砂田 at 2006-05-05 05:13 x
なんちゃってプロ。っていますね~。

先日、とある投資本の編集を手伝ったのですが、そこの編集者が驚いたことに他の本を参考に転載しながら原稿を書いていました。

不思議だったので聞いてみたら、一般の編集者と言え、投資の本を書くと言うくらいなので、前提知識があるかと思えば、投資をしたことも無いと言う。

納得。解らないからパクル。パクって体裁だけ整える。それでも投資ブームだから売れるだろうってか。

そんなことしてるから、こんな内容が原稿であがってくる。

JASDAQ=店頭市場

そんな本には、投資家や投資家の卵達にとって害になるだけ。

「なんちゃってプロ」も甚だしい例でした。
Commented by yoshi-aki2006 at 2006-05-05 10:04
砂田さん、コメントありがとう!!
先日、「男前がますます上がったね!」と思いました。男前が仕事について真剣に語る姿は美しいよ。
それに比べて「なんちゃってプロ」は男も女も見苦しい。特に中年の「なんちゃってプロ」は醜くさえある。そういう人が手抜きの悪い手本になるんだよね。私も市場を分ってないFPがあつかましくも株指南しているのを見ると沸騰します。燃えるよ、そういういい加減な人が業界にいるだけで。お互いに投資家をミスリードしないよう、いい加減な人たち撲滅運動をしましょう! がんばろうね!

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