売上を上げたければ客の視線を追え!~客が買いたいものを知る!

ある日のこと。
仕事先の人と待ち合わせた。
新幹線に乗り遅れ、集合時間に遅れるという連絡がきたので、「よし、この機会に」と思い切って待ち合わせ場所にほど近いデパートへ直行した。

懸案のインナーさがしだ。
使える時間は30分。
デパートの近くで待ち合わせ、相手が遅れるという奇跡はあまりないので、このチャンスを生かして買い物を済ませたい。

何故インナー探しかというと、黒のスーツばかりたくさんあって今秋もなかなか気に入ったスーツが見つからず、デザインが気に入ったのでまた仕方なく黒を購入するといういきさつがあり、そのスーツの下に着る派手なインナーが欲しかったのだ。

セミナー壇上でモニターを説明する際、ライトを消すと黒いスーツでは上から下まで真っ黒影みたいになる。だから本当は多少とも派手なスーツがいい。だけど、そういうスーツとはめったに出会えない。なかなかそういうスーツはメーカーに作ってもらえない。キレイ目の色のスーツは常に完売しているというのにメーカーは無難色のダークなスーツばかり作っている。だからせめてインナーをというわけだ。

さて、その日も黒のスーツを着ていた。
売り場に駆け上がり、適当な店でばばば~っとツルリンとした素材のインナーがかかったハンガーをつかんで鏡の前に直行する。
すると鏡を見る前から「それの色違いもありますよ~」と販売員さんの声がかかる。

色違いに用はなく、マイカラーは決めている。決め打ちして鏡の前に行っているのにわかってないなと思わずにはいられないれど、「はいはい。そうですか」と当たり障りのない返事でかわすことに。

すると販売員の女性は「これはいかがですかー」ともこもこしたインナーを持ってくる。
来店した時から客の視線を追っていればまず、もこもこはノーサンキューとわかるはずなのにビジネス脳を鍛え逃しているようだ。惜しいなあ。せっかく買う気満々で来ているのに。

30分しか時間がない中、売り上げが面白いほど伸びたら、この若い若い女性はきっと仕事が面白くなるはずだと思い直し、話してみることにした。

「あのね、今私が手にしているのはあなたが見ての通り、みんなツルリンとしている素材ばかりでしょ。しかも今着ている黒いスーツに合わせようとしているよね。あなたの勧めてくれるインナーは私のニーズには全くあっていないってこと、理解してくれる?」
ちょっとくどいかな、と思ったけれど、そういってみた。
販売員の女性は目をくりくりさせて、言われた言葉を必死で理解しようと努めてはいる。だけど、よく、わからないみたいだ。そりゃそうだよね。私のような仕事をしてみないと実感はわかないだろう。

そこでさらに具体的にこちらのニーズの源泉を話す。モニターの前で真っ黒けになるのをさけたいの、わかる?
もこもこしたものはインナーに着たくないの。ビジネスシーンではスーツの下にそういうものをあまり着ないものよ。動き辛いしね?
あなたが次に持ってきてくれた、クロと金のポーダーのセーターは今私が来ているスーツとは雰囲気が合わないよね?

「はあ~、なるほど~」とまた必死でわかろうとしているけれど、まだちゃんとはわからないみたいだ。
で、こちらも探しているものをもっと具体的に伝えることにする。

これと同じ布のスカートはないの?
ワンピはどうよ?

すると出てきた! こういうふうにいえば出てくるのだ! よしよし。

一応は試着し、即決。××円以上お買い求めいただくとグッズが差し上げられるのでカウンターに手続きに行ってほしいといわれる。彼女は精一杯のサービスのつもりだ。うーん、時間がないのだけど、こんな重たい仕事鞄をもってあちこちに行きたくないのだけど・・・と言ったものの「その間に包んでおきますから」といわれて、しぶしぶ、言われた通りに。うーん、グッズなあ・・・・。ちょっと、世代ギャップを感じる。ま、いいか。

とにもかくにも30分以内に待ち合わせ場所に戻ることができたし。

今の時代、ゆったりした時間を持って買い物にやってこられる人ばかりではない。私みたいに出張が多く季節の服をタイミングよくそろえる時間的余裕のない人はけして少なくない。そういう人は絶対に買いたいのに選んでいる時間はない。そんな客をぱっと捕まえることができれば店は売り上げは立つ。

それには客が飛び込んできたときにいきなり声をかけず、まず客の視線を追いかけることだ。時間がない客はまっすぐに自分が探しているものに近いものを選ぶ。視線を止めた箇所をしっかり記憶し、その客のニーズを即座に分析する力を持つべきだ。

すると場違いだったり、ニーズ違いのモノを勧めて客を興ざめにしたり、逃すようなことはなくなる。

スーツに合わせようとしているなら、インナーなのだし、けしてスカートではないわけだ。

しかしながら、そうしたアナリスト的な販売員の人はまだまだ現場には少ない。

私なら絶対にもっと売ってやるのにな、と客の立場で歯がゆくてならない。
買い物なんておおいに気分が関係している。
その日、私は予算の半分にも満たない額しか買わなかった。

しっかり客の視線を記憶し、的確な品を間髪を入れず勧めてくれたらもっと買ったのにな、と、客の立場を忘れて「惜しいなあ」と思った。

服飾店舗の経営は難しいものだ。いい服を作ったからと言って販売の現場が的確なコンセルジュ機能を果たしてくれなければニーズに応えられない。
面白いように売るには現場の人材力なのだ。
服ビジネスをやる人に是非考えてもらいたいことだと思った。

by yoshi-aki2006 | 2013-10-31 22:43 | ビジネス | Comments(0)  

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