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by yoshi-aki2006

大竹しのぶさん主演「ピアフ」2016日比谷シアタークリエ

これまで、思い立った時に、一生に一度は観ておきたいと思う人の舞台を観て来ました。ジャンルはまちまちです。
森光子さん、山岡久乃さん、山田 五十鈴さん、美空ひばりさん。二代目水谷八重子さん。

梅沢 富美男さん、前川清さん、藤山直美さん、中村勘三郎さん。坂東玉三郎さん。大地真央さん。「一度観てみたい」と見に行って、玉三郎さんや中村勘三郎さんのようにすっかりはまってしまった役者さんもいます。

今日は大竹しのぶさん。作品は「ピアフ」です。
2016年2月7日~3月13日まで日比谷のシアタークリエで。私が観たのは初日から2日の舞台でした。
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まず、驚いたのは大竹さんをはじめとして女優さんの多くがヒールをはいて舞台を務めていたことです。
長時間、あんなに高いヒールの靴で激しく立ち振る舞うなんて、どれだけ体力気力のいることでしょう?
ほぼ同世代の私にはとてもまねのできない芸当です。
まず、そのことに感じ入りました。


もう一つ、「大丈夫か?」と心配になったのは全舞台、台詞を言い詰め、歌いっぱなしの大竹さんののどです。一日2講演の日も一週間に二回ほどあり、二日目にしてこののどの酷使。
大きな御世話ながら乗り切れるのかなと心配しました。

さて、中身ですが、2011年この作品の初演に対して演出の栗山民也氏は芸術選奨文部科学大臣賞を受賞されているし、大竹しのぶさんも読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞されており、作品の確かさは折り紙つきといっていいわけですが、あえて、好き勝手なことを書かせていただくと・・・・。

まず、ピアフを蓮っ葉に描こうとするあまり、役者の台詞に聞き捨てならない中途半端な隠語が多々、出てくる点にちょっと辟易しました。

観客の75%は女性でその過半数は年配の方です。その方たちに思い切り届く隠語であればまだしも、笑うに笑えず、しかも、そのフレーズがあったからってピアフがピアフたると思わせるのに効果的でもないのです。作品や役者の魅力を向上させる、もっとふさわしい台詞があったはずなのになあと何箇所かで感じました。

それと大竹しのぶさんがピアフを演じるのって、ホントに大竹さんなのか?という思いもありました。大竹さんという女優さんのありようを存分に見せるのに果たして「ピアフ」なのかなあ?と劇中、ずっと考えていました。この役を黒木瞳さんが演じたら、あるいは大地真央さん、涼風真世さんだったら?
つまり本格的に歌える人なら、また違っていただろうなと。

というのもどんなに大竹さんの「ピアフ」にかける気迫が感じられても、「歌」になると「絵」にはなっても圧倒的に異次元感が否めないからです。

女優さんがあそこまで歌えるのはすごいことだとは思いますが、マレーネ・デートリッヒ役の元宝塚トップスターの彩輝なおさんが登場すると、その眩いばかりのミュージカルで鍛え上げた人が持つ強いオーラや歌、台詞との異次元感との落差がとても大きく感じられ、やはりミュージカルならミュージカルの質を高める声楽の訓練を積んできた人でないとなあ。。。。と感じるのでした。

男性人の歌もちゃんと歌をやってきた人の歌い方であり、それを生かしてミュージカルとしてもっと作品を作りこめるのに、演技派である大竹さんをこの作品にはめ込む無理繰り感があるわけです。大竹さんの「歌、一生懸命」が始まるたびに、こちらは体が硬くなり、歌い終わると「ああ、事故らず、ほっとした」と弛緩するのはちょっとつらいものがあり、惜しいことになっている、と思いました。

それと二幕目は冗漫な場面があり、もうちょっと何とかならないかと感じました。

さて、初めて拝見する「生」大竹しのぶさん。日本を代表する女優さんの一人であることは間違いないとしても、好きか嫌いかで分ければ、あんまり好きな女優さんではなく、「それはどうしてなのか?」が知りたくて観にいった部分もあったのですが、たぶん大竹さんから感じる「騒(そう)」の気配が私は苦手なんだろうと思います。

「虚」にして「騒」。何に対して「虚」なのかといえば自分の感心のないことに対しては「虚」であり、大竹しのぶをプロデュースしていくことに「騒」の勢いがある方なんだろうと思います。そこが彼女の天才的な演技力の源泉なのでしょうけれど。

けして美人ではないし、首がちょっと亥首というか、長くない点でスタイルがいいわけでもない。声も声量も突出しているわけでもない。台詞回しの語尾がちょっとしゃくれ上がる癖も舞台女優としては克服すべき課題です。でも、只者ではない存在感を「騒」の勢いでずっと保持されている点で大竹しのぶという女優道は鈴音のようにずっと鳴り続けている・・・・。そんな感じです。

中村勘三郎さんが開腹手術をした直後に見舞いに来た大竹さんに、元気な姿を見せようと、勘三郎さんが歩いて見せ、その後に吐いたものが肺に入って感染症を引き起こし、結果的に亡くなったという経緯から、もしも、その日、大竹さんにスケジュールが入っていて見舞いに行く日がもっと後になっていれば、と勘三郎さんのファンの一人として当時は運命のいたずらを残念に思ったものでしたが、それは大事な親友をなくした大竹さんが一番悔しいことだろうとラストの「水に流して」を歌う姿に想いました。

さて、大竹さんは今秋、「三婆」で舞台にたつ予定だそうです。こういうコミカルな舞台のほうが大竹さんの持ち味を出せるのではないかしら。

シリアスな演目なら「ミザリー」のようなものはどうなんだろう? いっそサリバン先生で押し通す手もありだと思う。

それとも「ピアフ」を歌いこむ?
実際のピアフはフランス版美空ひばりというか、ありえない声量で、よく通る声を持ち、作詞もしたし、フランス軍人を助けるために機転も利かせたことが知られており、今回の脚本のように男性から男性を渡り歩く、ただただ下品な女性ではなかったらしい。どれだけ実際のピアフがすがすがしい本質を持っていたかはあの透明感のある歌声から感じ取ることができます。

よい本でもっとビアフに磨きをかけていく道もある、かなあ。
その過程で、大竹さんは自らのエネルギーの源泉である「騒」を手放さなくてはならないと思うけれど。
それができた時、私は観客の一人として今の舞台における無理繰り感を極めようとしている姿に「よくやってる」と拍手するのではなく、心から感動し、涙を流して拍手ができるのだろうと思います。

客入りは「ピアフ」にそもそもアンテナが反応する人、大竹さんが出るのならと来た人、彩輝なおさんのつかんでいるファン、若手男性陣のファンという具合にうまく集客のつかみが行き届いており、ほぼ満席。
このキャスティングで主役を張り、商業芸術として成功させることに対する嗅覚もお見事で自分が何者で何者になろうとしているのか客観的にわかっている大竹さんの賢さ、怖さが伝わってきます。

プロデューサー感覚が優れている大竹さんだから、一番、大竹しのぶが生かされる役をこれからも貪欲に探していくに違いない。当日券も若干ながらあるようです。シアターは帝国ホテル前。
by yoshi-aki2006 | 2016-02-09 01:41 | アンテナ | Comments(0)