教室運営のコツ 生徒ファーストでないと教室はつぶれる!

複数の知り合いが様々な教室を運営していますが、経営はなかなか大変だといいます。
何しろ少子高齢化が深刻。
子供が少なくなっている上、受験を契機にお稽古事を卒業してしまう。
では「大人の生徒さん」はどうかというと、マダムたちの高齢化が進み、お教室に通えなくなり、こちらもやめていく。

昭和のお金持ち、いわゆる「サラリーマン、公務員資産家」のマダムたちは夫の年金が潤沢で家計にゆとりがあるから、教室としてはぜひとも通ってほしいわけですが、寄る年波には勝てない。それに夫が亡くなれば年金もぐっと減るわけで、財布のひもが堅くなる。

ダンス、舞踊系のみならず書道、絵画なども生徒数が減りぎみ、といいます。
そこに持ってきて、競合が増加。
日本の豊かさはなんだかんだ言っても2000年くらいまでは保てていたので当時20歳前後の人たちに今、先生が務まるキャリアを積んでいる人たちが出てきている。

構造的に教えたい人が増え、習う人が減っている状態だから、ますます教室運営が困難になるわけですね。

しかも、スタジオなどの場所代、事務作業、受付などを頼む場合の人件費などは値上がり傾向。
そんな中、月謝は値上げできない。
かつて、中間所得層の年収は少なくても600万。800-1500万プレーヤーがメイン層だった。しかし、今は正規の会社員ですら年収400万円台が多くなっている。
すると趣味のお稽古ごとに月々、高額のお月謝を払える家計は少ない。
子供には将来の年収に直結する語学や受験塾という判断をする親御の気持ちもある。

趣味のお教室には運営難がこれでもかとあって、ついには廃業に追い込まれてしまうわけです。
知り合いのA子さんも苦難と格闘の末、ついに今年三月末で教室をたたんでしまいました。
「コロナが決定的ダメージだった」とはいいますが、「家賃などの運営費で毎月、かなり厳しかったうえに自分の将来も見据えて今、やめるしかないと思った」といいます。
A子さんは気持ちを切り替えて、働くことにしたそうです。
気がつけばA子さんも60歳を過ぎ、「これからの人生を考えると蓄えがないまま、人生100年時代を乗り切っていけるのかどうか、ものすごく不安になった」というのです。
「今は体が動くけれど、80歳台、90歳台、100歳台を迎えたとして自分はいったいどこでどういう暮らし方をしているのか、コロナで通う生徒が途絶える中で考えるようになった」そうです。

一番のリスクは高齢になって、認知症になった場合。
家族がいないA子さん。兄弟も高齢化が進み、あてにはできない。
一人、施設に入ることになったらそれなりの費用が掛かります。

A子さんの知り合いの中には健康なうちから、各施設の見学に行って比較検討している用意周到な人もいて、「それに比べて、私は自分の教室運営に負われ、蓄えもなく、将来設計もできていない。生徒も減る中、急に不安になった」と。

「先生業」で長年やってきた人がパートで働くって、気持ちの切り替えが大変だと思いますが、それでも、将来の不安に備えることに目を向けて頑張っていこうというA子さんにはエールを送りたいなと思いました。

長年、教室を運営してきたA子さん。これからお教室を開きたいと思っている人へのヒントになるお話もたくさん聞きましたのでシェアしますね。

教室運営で一番大切なのは通ってくれる生徒の確保。
そのせっかくの生徒さんは思いがけないことでやめていく。
表向きの事情とは違って本音は何かに嫌気がさしてやめていく。その不満の代表的なものには、

①そもそも、教室としての機能が不十分
・・・休んだ場合の振替、通いやすい時間帯でのレッスン、緊急連絡網、スケジュールなどが確立されていない。
クラス・スケジュールがホームページなどのどこをみたらいいかわかりにくい

②お金面
・・・いろんな名目での突然の徴収をしてはいけない。家計管理面で生徒の段取りが狂う教室ファーストな経営がなされていると受け止められる。徴収日時がバラバラでわかりにくいのもNG。
料金体系が生徒にわからない。やたら金銭徴収のペーパーを配り、都度都度のお金とペーパーの管理が大変な状態も×。バラバラな都度都度の徴収は教室ファーストであり、生徒ファーストではない。まず最初に生徒に「何にいくら必要になるか」を明らかに。
       
教室や先生が昭和の金銭感覚から抜け切れないと「失われた20年組」からはしらけられる。
「こんなセレブな人たちととても一緒にはやっていけない!」とイベントが終わった当日にやめていった子育て中の生徒がいた。生徒の中には高額出費をものともしない人もいるが、そういう人たちは総人口のわずか数%であり、大多数ではない。どの所得層に目を向けるか、教室運営者はよくよく考えるべき。
ちなみに日舞は貸衣装代と各所へのお礼、来場者へのお弁当手配、社交ダンスやバレエなどはプロ男性と組む費用などかなりの支出が伴う。

③教え方
・・・せっかく途中まで進んだレッスンを先生の気分で「やっぱり、これ、やめよう」など、先生ファーストすぎる指導がある。ある生徒は「これが、あ、この先生にならうのやめよと思ったきっかけ」といいます。
生徒にむつかしいことをさせ、体を壊させたり、仕事を抱えて通っている生徒の負担になりすぎる指導がある。
振り付けが難しくて、毎回、生徒は振り付けを消化するのに精いっぱいという状態で疲れて終わってしまう。
「普段は主婦として地味に生活しているのに、派手な衣装を着て、舞台で踊るなんて異次元。はまっちゃったー」という50~70歳代主婦もいた。
プロになるわけではない生徒にとって何がベストなのか、考えた教え方が必要。

④人間関係
・・・生徒が接する人(先生、事務方、代教、生徒同士)などで、意地悪をされたり、好き嫌いが露骨だったり、相性面で会わない場合、生徒はやめていく
「どこの教室にもいるんですよ」と聞くが、「その人がいるがために雰囲気が悪くなる」。しかし、そういう生徒ほど、上手に表の顔と裏の顔を使い分け、上にはこびて気に入られようとするため、上からは見えにくい。そうしたタイプの人材は一定期間、教室に粘着するため、なぜか生徒が続かず、やめていき、教室運営を困難にさせる。
一人の人が「少なくとも20人くらいの生徒退所」の原因になっている場合もある。先生、教室側はそういう困った人材をどうするかが問われる。
先生にとって都合がいい人材であっても生徒には嫌がられている人はいないか。
そのクラスだけ生徒の定着率が悪いのはなぜか? 理由があるはず。

⑤習いたいものがない
・・・先生ファーストで提供するレッスン内容で生徒の不満が渦巻くことがある。月謝を払って通ってくる生徒ファーストに配慮する場合、生徒が望んでいる内容にして不満がたまらないようにすることが大切。
B子さんはベリーダンスの次のレッスンを決める時、3種類くらいの演目を提案し、生徒の多数決を取ってレッスン内容を決めていた。これはマダムたちには好評だった。

⑥先生
トップの安定度
・・・発表会など大きなイベント前にヒステリー傾向になる先生もいれば、自分の気に入った人で回りを固め、全体が見えなくなる先生もいる。おろおろが止まらず、生徒に「大丈夫ですよ」と言ってもらわないといけない先生も。いずれの先生もお教室をたたんだ。当たり前だけどトップがこうだと生徒は困る。

生徒が「体調が悪く休みたい」などの連絡をしたときなどに生徒に「お体をお大事になさってください」といった言葉が一切なく、運営のルールを伝える返信などで対応した先生は「その生徒が生涯、自分のステージを見に来てくれる可能性」まで失っている。退所した生徒は10人の知り合いに「こんな対応をされた」などを話し、10人はさらに10人に話すため鼠算式に評判が知れ渡る。まわりまわってステージチケットも売れなくなるし、生徒も集まりにくくなる。その先生も教室を閉めた。

A子さんは教室をたたんでから、気がついたことがあるといいます。
「生徒が離れていった理由には私の在り方もあったかもね。オワコンなのに、偉そうに見えていたかもしれない。自分では気がつかなかったけれど、どこか先生ファーストだったかもしれない。アーテイストとしての在り方と商行為としての先生業の使い分けができていなかった。生徒から見るとオワコンとしてアーテイストとしての魅力が低下、なのに商行為としての教室運営で生徒ファーストを意識しないまま、指導していたのかもしれない。生徒からすればなんだよ、というのがあったのかもね」

なかなか深い話です。社長業でも当てはまることですが、自分のオワコン(魅力の低下)は自分にはわからない。しかし、どんな人もオワコンになる。理由は次から次へと時は進み、新しい世代が出てくるからです。
芸能人、スポーツ選手などの世界では世代交代はわかりやすいですが、どんな世界でもオワコンと背中合わせ。しかし、自分のオワコン度は自分には見えない。

さて、何はともあれ、習い事はお金と時間と体という自分の資源を投入して過ごす場所。
ある程度、妥当な生徒ファーストが通らないなら場所を選び直すのも一法。

幸い、私の通っている習い事のお教室はすこぶる快適。笑顔が絶えない楽しいレッスンが適正価格で受けられていてラッキーだと思っています♪
というわけで、習い事も仕事も頑張っていこうと思います!
月刊木村佳子5月号をアップしました! ぜひ、ごらんくださいね♬





by yoshi-aki2006 | 2022-05-04 04:15 | シンキング | Comments(0)  

<< NHK「東京ブラックホール」を... 「その人」には訳がある! >>