家族がNetflixでしか見られない「イカ・ゲーム」(ファン・ドンヒョク監督)を観ようというので試したら、これがハマってハマってついに今の時点で観られる9話まで一気に鑑賞。久しぶりに釘付けになった。
ネタばれになるので詳しくは書かないが、ものすごく深いテーマを扱っている。自分自身の哲学を深いところから問われる点で単なる娯楽映画ではない。
投資をする人にもお勧めだ。この作品はきっと参考になる。
もちろん、株の買い方やドル円がどうしたこうしたというノウハウは出てこない。しかし、ゲーム理論的なヒントがたくさんある。
そこに人のサガがでる。いわゆる「あるある」に考えさせられる。「こういう人っているよなあ」とか「自分だったらどうするか」と。
おそらく北野武さんもきっとこの映画を観て、大いに創作意欲をかきたてられているはずだ。
いや、実にすごい作品だった。
私はKポップにハマらなかったし、韓国ドラマにもハマらなかった。だから、韓国の芸能人には詳しくない。
登場人物の演技が素晴らしいのできっと実力俳優さんらが登場しているのだと思うが、その迫真の演技もさることながら、韓国の役者さんの顔を見ていて「ああ、人に受ける顔ってやっぱりあるんだなあ」と今更ながらに思った。
主人公のソン・ギフン役の イ・ジョンジェさんは日本の俳優の小林薫さん、近藤正臣さん、大泉洋さん、そしてどこかちょっと福山雅治さんの面影がある。
そして チョ・サンウ役のパク・ヘスさんはちょっと西島 秀俊さんと被る。
ファン・ジュノ役のウィ・ハジュンさんは坂口健太郎さんと被る。
さらにチャン・ドクス役のホ・ソンテさんはホリエモンさん、林真理子さんと被る。
ハン・ミニョ役のキム・ジュリョンさんは大塚寧々さん、斉藤由貴さん、小池栄子さんと被る。
作品に登場する韓国人の顔はどの人のもものすごく懐かしい。
彼ら彼女らの顔はとても懐かしい誰かに似ている気がする。
作品に登場する韓国の現在の姿にもつまされるものがある。われわれ日本人が過ごしてきた戦後の日々と被るからだろう。
底流に流れる旋律はこの作品の主人公のようにものすごく哀しい。
ゲームに参加する人々の姿は経済社会、学歴社会、階級社会という具合にしつらえられた闘牛場のような顕在社会の中で、牛であり馬であり羊であり犬であり蟻だ。こんなはずではなかったのに。気が付けばそこにいたのだ。気か付く場所が今ここで。
だから主人公が「俺たちは人間なんだ!」と叫ぶシーンに観ている側は深く共鳴する。
特別客を国際金融資本と監督が示唆している点にも。
ところで、日本と韓国の間には徴用工問題などいろいろと残念な報道があり、なんとなく日本人と韓国人の間には微妙なものがあるのは事実だ。
しかし、この作品を見ていて、なぜそうした政治的経済的な分断工作にも似た事柄がこれでもかこれでもかと私たちの精神に、潜在意識に「憎悪」「嫌悪」を塗り込むがごとく報道され続けるのかもわかった気がした。
日本人と韓国人は実はものすごく懐かしい関係なのだ。
そして、いったん垣根が取れると私たちはきっとお互いに強く希求しあうはずだ。
それを恐れる存在がこの世にはいる。だから、盛んに絶え間なく「近ずくな、奴らは敵なんだ」「憎むべき相手なんだ」と日韓の分断を図ろうとするのだろうな、と感じた。