ビジネス作法~相手のメンツの立て方

デザインだのなんだの、さまざまな試作品を作ってもらうことがあります。

さて、ある時。
相手はその道の大先生。
国際的にも評価されているから試作品一つお願いするのも結構、気を使います。
試作品でもそれなりの対価はお支払いするのですが、第一回目のお品は注文通りではありませんでした。
悪くないけどどーも、違う・・・。
やっぱり、希望とちょっと違ってる。
どーすりゃいいのさ?
おずおずとお伺いを立てると、「これでいい! ペストである!」
と師のたまう。

が、やっぱり違う。
お弟子さんに希望を伝えてしばし待つと、今度はもっとかけ離れたものが出来上がってきました。

すでに費やした費用を考えるとどうも納得がいかない。

さすがに、「かくかく、しかじか、あーだの、こーだの」
とちょっとクレームをつけました。

大先生は「あー、やっちゃったかな?」みたいなお顔をされていましたが、やはり現場では「これでいいのだ!」と譲られません。
こちらもそれ以上はと思い、引きさがりました。

さて、ここからが大切です。

どうしてこんなに行き違うのか原因を良ーく考えてみました。

こちらの情報伝達力が足りていないのか。
言葉の文化圏が違うのか?
あるいは情報が途中で断絶しているのか?
相手により伝えるにはテキストか?
画像か?

いろいろ考えて写真や資料を用意して、画像テキスト画像テキストと、何度か直接、先生に届けることにしました。

その結果、最初の先生の作品がベストという話になり、
私も折れて「そうですね、先生のおっしゃる通りです」ということで、
全面的に先生の意見に従うことにしました。

心の中では、ああ~、あれだけ準備した仕様書はなんだったのかなーと思わないではありませんでしたが、待つことしばし。

すると、あら、不思議。
今度はこちらの希望通りの作品が届きました。

打ち合わせの時は「前回の先生の作品でお願いいたします」「よっしゃ、私が正しかろう!」と皆の前でやりとりしたのに?
先生はそのやりとりの中で「ほら、やっぱり私の見解が一番正しく、初回に示した作品が一番良かったでしょう?」と高らかに宣言されていたのに。

どうしてか、よくわかりませんでしたが、今になってみると、
お弟子さんたちの前で注文通りでない、満足していないとの顧客の言うことを「はい、そうですね」といえば、たちまち「先生」のメンツがつぶれてしまいます。
「自分が一番!」で通っていなければならない現場で、それは死んでも認められない。

でも、顧客が誠意を尽くして、情報伝達に勤めれば、
「ああ、そうか、この顧客はこういうことを言いたかったんだな」とわかる。

なので、「やっぱり、私の言ったとおりでしょう?」ということを是が非でも皆に周知徹底した上で、こっそり、こちらの希望を聞いてくれていたんですね。

ああ、そういうことなんだな。
相手のメンツを立てることで、ちゃんと、こちらの意見を聞いてもらえた。

なるほど!
相手に是が非でも「間違い」を認めさせずによかったなと思いました。

しかし、これは相手が一流の大先生だから、通用することで、
悪い相手だとこうはいきません。

それにしても世の中、むつかしいですね。

でも、ただ一つ言えることは一流の人と付き合えということです。
そして、その人のメンツをつぶさないように交渉すれば、結果はバッチリと言うわけです。

編集者とデザイン事務所などのやりとりでご苦労されている現場などがたくさんあると思いますが、気持ちが通じるとホントにうれしいですね!

by yoshi-aki2006 | 2012-02-07 17:46 | ビジネス | Comments(2)  

Commented by かず at 2015-12-06 12:28 x
相手のメンツを立てるって難しいですよね
Commented by yoshi-aki2006 at 2015-12-08 00:45
かずさん

コメントありがとうございます。人間ってみんな小さい利得に汲々としがみついている生き物ですから、面子をつぶされると、ぶわわわわ~となっちゃうんすよね。そのぶわわわわ~は長年培ってきたその人のトラウマ直結事項なので、こっちはびっくりぽんになっちゃいます。手に負えなくなって鎮められなくなりますから、踏まないようにするほかありません。しかし、面子を立てすぎると、βエンドルフィンが出て、幸せホルモンでしつこくしがみついてくることもあり、さじ加減が必要ですね。ホント、難しいです。

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