株式市場の銘柄研究を仕事の一つにしていることもあり、上場企業のニュースはとても気になる。
会社の工場で火災があった、となれば一大事だし、海外子会社を清算したとか、どこそこと合併したとかのニュースもその背景をあれこれ調べてみたりする。
該当会社は事案の後、成長するのか。止まるのか。
今、買いなのか。売りなのか。
ニュースでその会社の現状とベクトルを正確に感じ取ることができれば運用に反映できる。
ニュースの中には企業の転落が誰の目にも明らかなものもある。
粉飾決算で2月28日に上場廃止になるG社のようなケースだ。
同社はノルウェー政府年金基金や外資金融機関など大株主に外国人投資家が約半数を占め、株価もつい二年前まで4200円台まで駆け上がっていた。
しかし、上場企業まで育て上げた会長が2021年4月に亡くなると一気にことが表面化した。
会長は一度、会社をつぶしていて、そのどん底から這い上がってきた過去がある。
その伝説の呪縛だったんだろうか。
あるいはそもそもG社自体が元会長の壮大な妄想の産物だったのだろうか。
マザーズ市場に会社を上場させたとき、すでに架空取引が内包されていたという。
過去、会社をつぶしたけれど、どうだ、マザーズ上場だと見返したかったんだろうか。
あるところから、「外資の期待に応えたい」という強迫神経症のような状態にも陥っていた気配もある。
会社をつぶしたことのある社長の手記を読んだことがある。
債権者会議に出て罵倒されながら頭を下げ続けた、というくだりを読んで、倒産とはそういうことだと思った。
これまで、社長、社長とちやほやしていた人たちが途端に手のひらを返し、これ以上ない言葉で罵倒する。親兄弟親戚に迷惑を掛けたら、親族付き合いも途絶える。
家屋敷も手放し、家族と離散することにもなる。
金がない、支払い能力がない人間は経済社会では全く相手にされない。顔がないのと同じで透明人間のように無視される。
そんな倒産社長が一番つらかったのは債権者会議で唯一、「社長、今までありがとうな。元気でいてくださいよ。顔を上げてください」と声をかけてくれた取引先企業の社長がいたのに、うつむいたまま、すみませんとしか言えなかったことだった。
G社の元会長もそんな辛酸をなめた過去があるに違いない。
くやしさを跳ね返して上場企業の社長に登った、ところまではよかったんだけどなあ。
もう一社、この会社に何が起こっているんだろうと思わせるのが現役社長の経費の私的流用を暴いて退任に追い込んだA社だ。
同社はメディアに対する外国企業の影響を制限するため、大株主は邦人企業ばかり。
系列間の人の移動もあるため、「配慮」「忖度」もまかり通りやすいのかなと思う。
同社では役職者の不正受給が先行して発覚し、それに伴う社内調査でなんと社長まで経費私的流用で辞任に追い込まれてしまった。
こういう報道からは社内抗争や、人と人との対立などが激しい会社なのかなとの印象を受ける。
現役社長を60万円の私的流用で辞任に追い込む、なんてことはやはり、恥。それでも、そういう発表になってしまうのは、おそらく、その社長が相当な嫌われ者だったからだ。
同社役職者が国のお金、つまり国民の税金をだまし取ったのは明らかな犯罪だから、逮捕されてしかるべしだ。
ちなみに、この役職者は「自分は御曹司。サラリーマンは仮の姿」と他者に豪語し、周囲からの評判は「副業に熱心」というもの。仕事より、名誉より金だったんだなあ。
ところで、この人はコネ入社だったのかな、と思わせられる。
こういうタイプの社員をメディア系で見かける。
仕事もできず、態度も悪く、やることなすこと、会社の評判を落とすだけ。
なのに取引先への考慮、広告とりの観点からその人物に支払う給料を上回るメリットが会社にある、と判断されればそんな人物でも入社できる会社がある。
そういう人物は製造会社には向かないし、そもそも入社したとしても務まらない。
本人はメディアをかっこいい職業、プレミアムを人に感じさせられる、つまり、俺様メディア勤務なんだぜ、といえば人がかしずいてくれるという幻想の持ち主だから、メディアに勤めたがる。メディアか広告会社しか採用してくれるところがない、とも言い換えられる。
親兄弟親戚も「へー、医者にも弁護士にもなれず、大手商社やメーカーにも入れなかった××がテレビ局に就職したんだ」と一目はおいてくれる。
親も「いや、息子は××テレビにいるんですよ」とまんざらでもない。彼らにとってメディアは支配層に属する職業であり、利権に思えるのだろう。
というわけでくだんの輩もメディアで部長として40歳台を迎えたわけだ。
しかし、国民の税金をだまし取ったという卑しい行為で逮捕されたこの後、どう生きていこうっていうんだろう?
名前が知られない海外への逃避も感染症の騒動で今はむつかしかろう。
それはともかく、家族も恥ずかしいだろうな。
御曹司だからお金はいっぱいあるんだろうに。身内に認めてもらえていず、自分の才覚で稼げていることを示したかったんだろうか。
あるいは愛人に貢ぐような内緒の財布が欲しかったんだろうか。
そして、60万円の私的経費流用で辞任した元社長は63歳。これからどう生きていくんだろう。全国ニュースになっては天下りを受け入れる会社、社外取締役に迎える会社も少なかろうに。63歳なんてまだまだ若いのに。あと20年は余命があるだろうに。
家には社長就任の際に届いた胡蝶蘭が飾られていたというけれど、こんな展開が待ち受けようとは家族も恥ずかしい。
夫人や子供は買い物にも出にくいだろうし、ほとぼりが冷めるまでひっそり生きていくのは息苦しい。すると引っ越しするしかなくなるんだろうか。
そんなこともひっくるめての辞任報道なのだから、よほど現場に嫌われていたのだろうかな。
で、この後、この上場企業はどうなるか。
仕事柄、そういう銘柄は講演などで紹介しにくいのは確かだ。
さて、
粉飾決算G社の場合は投資家の自己責任という点でだまされた外資も悪いのよ、という話だが
メディア役職者が国民の税金からかすめ取った900万円余はいただけない。
想像だけど、たぶん、俺様メディア役職者様はえらそーにしていたんだろうな。
そして国民からだまし取った金で派手な生活をしていたんだろうかな。
メディアの名刺を切って、「俺様支配者層」とばかりに人をかしずかせ、高級ブランドを身に着け、かっこいい人風を装い洒落男然としていたのかな。高級飯を人のカネで飲み食べ、口を開けば「俺様御曹司」とうそぶき、金をだまし取る。
そんな人のどこが偉いよ?
自分で稼いだ金で牛丼を食べている人のほうがよっぽどエライ。
品性卑しからず、正しいことをせよ。
人を見る目をしっかりもって、役職についていてもいなくても、人として胸を張れる生き方をせよ。
上場企業の不祥事から今一度、そう思わせられた。株式市場ではSDGsとかいって重要視しているけれどどんな社員がいるかってのもSDGsの観点から大事なこと。
さて、講演会のお知らせです。