1年に数回、通っているクリニック。極度の貧血ではありながら、ほかでは「そのうち治る」となかなか処置してくれなかった根本原因の筋腫の手術をしていただき、その後はほぼ、薬をもらいに行くだけ。
それでも数年に一度は「血液ドック」を受けることがある。公的な健康診断でも受けられるが、書類が送られてくる時期が限られているし、そのクリニックでは「認知症リスクチェック」など新しいチェックも勧められたりする。
もちろん、患者に勧めたら互助的にクリニックにも大きなメリットがあるのだろう。
この数年、何の検査も受けておらず、どこか悪くなっているのではないかな、と気になっていた。医師に聞いてみたい症状もある。そこで薬をもらうだけでなく、診察もしてもらおうかな、と考えたのがことの始まりだ。
触診してもらい、10万円近い金額の血液ドックとMRIをすることになった。
紹介状をもらってビジネス街の中心にあるセンターに出向く。
MRIは10数年ぶりだ。しかもこちらは保険適用になる。
場所柄、運転手付きの車でドアも開けてもらう企業の役員風の人も混じり、朝の早くからセンターは大盛況。各クリニックから「MRI受けてらっしゃい」と私と同じように紹介された人たちなのだろう。システマテックに一人ずつさばかれて、どんどんトンネルの中に誘導され、検査が進行していく。
MRI検査は、強力な磁石と電波を使って、磁場を発生させたトンネル状の装置の中で、FMラジオなどで用いられている周波数の電波を体にあて、体の内部の断面をさまざまな方向から画像にする。
放射線を浴びるレントゲンとは違うけれど、私は磁気に敏感なせいか、今も頭がぼーっとしていて、その点では「あんなの受けなければよかった」と思う。
もし、疾患が見つかれば「やっておいてよかった」と思い直すのだろうか。
この結果がでるには10日ほどかかる。
クリニックにはその結果をもって、血液検査の値も同時に聞く、ということになっていた。
しかし、血液検査の結果は中3日くらいで出るので一刻も早く知りたい。
そこで、前倒しで、クリニックを訪ねた。もちろん予約の上だ。
すると、土曜日ということもあって、いつもにも増して患者が待合室にあふれている。しかも若い子ばっかりだ。細くすらーっとした女性が多い。世代が若返ったんだな。いや、曜日のせいかな。
みんなそんなに婦人科系で気になることを抱えているのか? ピルをもらうのだろうか。受付でパッチをもらう人、呼ばれて診察台に乗る人。一体どこが悪いんだろう?
そんなことを考えながら待つこと数時間・・・・・。あまりに呼ばれないので確定申告に必要な一年分の数字を電卓で打ち終わる。習い事の振り付けの確認もした。
まあ、家にいたとて、猫と遊んだり、だらだらして後回しになりがちな作業もできたのだから、あきらめもつくが・・・・。
6時間をゆうに過ぎた頃、ようやく名前を呼ばれた。
11時半にクリニックに着いて、呼ばれたのが17;30だ。飲まず食わずだったのでダイエットには良かったのかも。
待合室には私ともう一人の女性だけ。一体、なんでこんなに待たされるのだろう?
診察が伴わないからなのか?
診察室に通されても一人しかいない看板先生は忙しそうにバタバタしている。看護師らが背後を何度も何度も風のように通り過ぎる。
やっと先生がツールに座ったと思ったら、「どこも悪いところなし」。
ほぼ、それで終わり。
いろいろ説明を聞きたい。質問すると「勝手にしゃべらないでー」「ちょっとまってー」とか言って患者を見もせずモニターのデータに目をやっている。
「先生、私、この点が気になるのでそこが衰えているのではないかと思うんですけど」というと「決めつけないで―、自己診断禁物ー」と制される。だから診てもらいに来ているんだろうが、よっ、センセイ!
しかも、私が知りたかった項目は血液ドックの検査内容には入っていないことが判明。
「全部、検査する」と聞いていたのに、まったく拍子抜けだ。
ベテラン看護士がサポートに来るとセンセイはすぐにどっかへ消えてしまった。6時間待って、診察10秒。
今日は結果だけ知らせる儲からん患者という位置付けなのかな。いや、そういうことだろう。今日の会計は580円だったもん。
「また4月くらいに血液検査にいらっしゃい。今度はその部分も項目に入れましょう」と言われたが、うーん。もう行きたくないかな。
近所の空いている内科に行くほうがいい。
うん、そうしよう。
それにしても。日本の国会議員だけでなく、お医者さんもいろんな意味で考えさせられる。
医師は一人一人の命と健康をサポートする技術者だ。しかし、クリニックを経営する場合は経営者、多様な患者を相手にするサービス業でもある。
看板先生ひとりのクリニックではそのバランスがむつかしいのだろう。
コロナが契機かそうでないかはわからないが、注射するのしないのでものすごく潤ったクリニックがある一方、大変なところもあると聞く。いずれにしても医業とカネの問題は今の日本の国会議員の症状と似て、なにやらザワザワ、ザラザラしている印象だ。
まったくなあ。
すがすがしいニッポン人としみじみそんな想いを共有したいものだと思った。