相手が想定以上の大バカ者であった時、人はどう対処するのだろうか?

気をつけなければならないことがある。
それは賢い人ほど、問題解決をしようと意気込む人ほど、困っている人を助けてやりたいと思う人ほど気をつけなければならないことである。

以前、ある専門家の会での話。
私はその集まりで長らく、紅一点、役員待遇だった。
毎月、会合があり、30名近いおっさんたちと弁当を食べ、さあ、今月の議題は・・・・と会議が始まる。しかし、毎回3時間以上も大紛糾してしまうのだ。
こういう案はけしからん、だの
それはよく吟味してからにしなければならない、だの、
意見はもっともらしいが、要は気に入らない相手が出した案はつぶしたい、というマウンドがありありだった。
もう、やめたい・・・・。
何度もそう思ったが、なかなか、やめることができなかった。

それが20年近く続いたある日、おっさんAグループとBグループが完全に対立してしまった。
賢いおっさんはすぐ、役員をやめた。
角を立てずにやめたから、その点でもその人は賢い人だったと思う。後で考えると私もその人に倣えばよかった。

紅一点としてはどちらにもつかず、さらっとかわしているつもりだった。
後で考えるとこれがバカだった。

AB双方から呼び出され、呼び出した人の過去の栄光話と、それぞれの悪口を散々聞かされた。聞くと、「へーえ、それはいかんですよなあ」と思わせられる。が、どっちもどっちだ。

会合の後、流れで飲み会になることもあった。
あるおっさんはその席で大演説を始める。
そして、若手に必ずはっぱをかける。

私にも「木村君、君が頑張らんといかんのだ。ああいう連中はかくかくしかじかでダメなんだから」
みたいなことを延々と、とうとうというわけだ。話しているうちにその人は正論の旗印を高らかにかかげ、ナポレオンのような英雄になって酔いしれていく。もっともっと後になってからだが、世間にはこういう人がいることを知る。酒が入るとナポレオン。素面ではお母さんのエプロンに隠れてしまうタイプ。

そのうち、「当初の規約であった報酬以上にお手盛りしている輩がいてけしからん」という話が紛糾し、AがBを、BがAを訴える騒ぎに発展。悪口合戦のるつぼから火の粉がどんどん飛んできた。
その時の顛末は話が長くなるのでここでは割愛する。
現在、関係者の多くは鬼籍に入り、私も役職から離れて久しい。 会はいろんな経緯を経て今は正常化している。

さて、Aグループ、Bグループの一連の騒動で対立を煽る側に回っていた数名のおっさんたちがいた。その一人が飲み会で演説していたナポレオンさんである。
ナポレオンさんは、Aグループの××が気に入らん、Bグループの▽△はけしからぬ、などとしょっちゅう言っていた。
どの人も名だたる大会社のそれなりの地位についている。ナポレオンさんも知らない人がいない立派な会社の役員だった。
今よりずっと若かった私には、「あの天下の××企業の役職者。自分より見識の高い人」との思いが強かった。

その人がそういうのだから、それはけしからない話かもしれない。そう思っていた。特にBグループの●●がけしからないという。ただ、私たちに言われても困るんだよなあ、と聞くたびに思っていた。
あまりにおっしやるので、「一体、長年、何故、●●さんのことをそんな風におっしゃるのですか?」と畳み込んで聞いてみたことがある。
20年間、聞かされてきた、どうにも不可解な批判・・・・。
「飲み会の席でおっしゃっていてもらちがあきません。私たち若手に言われても、どうも解せません。詳しく何が許せないのか教えてください」

するとナポレオンさんは、「それはねえ、それはねえ」と言いよどんだ後、
かくかくしかじか、
かくかくしかじか、
なんだ! だからわしは●●が許せんのだ!!

酒の勢いもあったのだろう。20年目にしてようやく明かされた話。私はひっくり返るほど驚いた。
なに?
ねんごろになっていた銀座のホステスを●●さんに寝取られただと?
そんなこと自分で●●さんに言えばいいじゃないか。自分の代わりに言ってくれる人、かたきをとってくれる人材求めて20年てか?!

バカいってんじゃないよ!
そんな理由で研鑽している若手にはっぱをかけて、●●さんに引導を渡せと騒いでいたのかこのおっさんは!
そんなおっさんを尊敬して、一生懸命勉強してきた自分も若手も、ホントにかわいそうだ。
このナポレオン氏のホントを見抜けなかった私ってなんてバカ?

しばらくして、私はナポレオンさんに淡々とした内容の書状を送り、以降、会合には出なくなった。
ナポレオンさんは自分の子分に「こんなん、いわれた。ぼくちん、どーしたらいい?」とおっしやっていたとか。チーン。ご愁傷様。

ところでナポレオンさんはAB双方に薪をどんどんくべながら、どちらにもいい顔をしていた。そして、宿敵●●さんが駆逐されると戦で奮迅した同胞、後輩には知らん顔してAグループにすり寄っていたそうだ。すがすがしいほどのクズという言葉があるが、そんなのにかすりもしない真正クズだったんだなあ。

ところで、私は自分のバカと決別できただろうか。
バカと遭遇したら、ともかく離れる。そして相手が想像を絶するバカであった場合、自分の不明を恥じ、自分の内なるバカを毅然と一掃しなければならない。

情勢が落ち着いてきた頃、対立を煽っていたおっさん群にナポレオンさんにも薪をくべ火力強化をしていた人の顔がすーっと浮かび上がってきた。
この人は被害者のふりが上手で、対立が抜き差しならなくなるにつれ、目立たないように後ずさりしていたが、一連の騒動にかかわっていた弁護士が「一番の悪党はその黒幕さんだね。どうにもひどい輩だねえ」としみじみ言っていた。

この人から見たら、みんなみんな大バカ者に見えたことだろう。
たくさんの専門家が利用されてエネルギーをむなしいことに費やした。
ところで、この人は52才の時、本社の出世コースから外され、外に出された。それをものすごく悔しがっていた。

本店人事部には見えていたのだろうな。


by yoshi-aki2006 | 2024-02-12 19:12 | ライフスタイル | Comments(1)  

Commented at 2024-03-09 04:59 x
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