石川妙子さんの作品は前回の「女帝 小池百合子」で示された通り、丁寧な取材によって展開され文章も読みやすく、読み始めるとやめられなくなる。
今回も週刊文春で連載されていた「ウェン カムイ 木嶋佳苗」に引き込まれた。
そして、しみじみと「親の因果が子に報い」ということを思った。
どんな親にどんなふうに育てられるか?
本人だけが単独で逸脱するのではない。
問題の子供は問題の親がつくる。
そう確信した。
いろんな事件が報道されるが、「この親にしてこの子あり」その側面は否めない。
生き物は環境で決まる。
植物だって日が当たらない場所で育つものと太陽、水、土、風、刈り取られるかそうでないかで雲泥の差がある。
ヒトもそうだ。どんな親が子供にどんなふうに接するかで全然違う。
バイオリニスト、バレエソリスト、などなど一芸で突出している人の親は子供の時から、子供の環境に影響を与えてきたに違いない。
親が不全でも、幼い時に「周囲の人からこんな良い刺激を受けた」という体験がその子にあればその子は道を外さず生きていける。
小さな社会の単位でも子供にいい影響を与えることができれば、その子は人の心を失わずに自分の人生を前向きに展開していける。
しかし、今は学校や地域が必ずしも機能していない。
子供の心にいい影響を与えられるような環境があるとは言い切れない。
私の知り合いで子供をいい方向に導いた人といえばAさんとBさんの顔が思い浮かぶ。
まず、Aさんだ。Aさんの父親は高卒という学歴で今でいうところのメガバンクに務めた。祖父は街中で商店を営んでおり「息子を大学にやる」というところまでの意識はなかったようだ。Aさんの父親は学歴で苦労したのだろう。息子であるAさんには何度か、そのことを言ったと推察する。そしてAさんの父親は懸命に働き、専業主婦の妻との間にAさんと次男をもうけた。
Aさんは銀行とは違う金融機関に勤め、やがては世の中の流れの中で無理なく起業し、現在、成功している。
Aさんには息子二人がいるが一人は外資系で活躍し、もう一人は日本で有数の法学部に進学し法律家になろうとしている。
子育てにそれなりに苦労していた時期はあったようだが、「親子三代でよく頑張って子供たちの人生を軌道に乗せたな」と感じる。この後、子供たちがどんな人生を歩むかはわからないが、少なくともここまでは親子二人三脚で来たよね。自分たち親世代ができることはみんなやったよ」というところまで頑張ったと感じる。
もう一人のBさんは国立大学を出て、当時は未上場の会社に勤めたが、上場間際になって子会社に飛ばされた。
そして、その子会社でも上場間際になってリストラされたという苦い経験を持つ。
勝手な憶測だが、Bさんの独特の合理的な生き方が会社人間からは異端児扱いされていたのかなと思う。
Bさんは自分の勉強に余念がなく、資格取得にも人脈つくりにも熱心だった。
それは会社から見れば、「独立するためにああいう行動をしているのかな」と見えたのかもしれない。
Bさんは研究熱心なことを悪びれず隠さないところがあるから、会社人間には煙たいところがあったのかとも思う。
郊外に家を持ち、「本を読むために必要」としてグリーン車で通勤していた。はっきりとした意思を持っていた。
会社を退いた後は資格を生かし、人脈を有効に活用してビジネスを成功させている。
一男一女に恵まれ、子育ても独特だった。子供が小さな時から大人の社会学として異業種交流会に同伴させていた。
子供は一流大学に進学し、長女は何社か超有名な外資系を経験。海外勤務の前に、Bさんがまとめ役になって交際中の相手と結婚、子供も持てている。
Bさんは長女の導師役になり、長女は仕事などで困ったときはBさんに相談しているようだ。
親が社会体験して身に染みたことを子供に知らせ、その子供たちは知ったことを「智」として道を選択することができる。AさんもBさんもしっかり親として人として務めたなと思う。
私はどうだったのかな、と考える。
父も母もが今の私を形成する要因の一つにはなっている。
そして父の親子関係、母が育った家庭環境などを考える。
「ああ、私がこのように思うことは彼らのこういう体験がベースになっているのかもな」
そんな風に考えるといろいろ発見がある。
そして今後のヒントにもなる。
子供は勝手に悪い子になったりいい子になったりするのではない。
親だって「親」になるのは初体験なのだからもともと立派な親であるわけがない。
子供の人生は親子で手探りであるところまでは作っていく合作なのだ。
「もう大丈夫だね。一人でやっていけるよね」ということろまで親は責任をもって育てなければならない。
産みっぱなし、泣いたら叩くみたいな蛮行は動物だってしない。
それは悪魔の所業でしかない。
さて、石井妙子さんの「ウェン カムイ 木嶋佳苗」。
金に困ったらあらゆる方法で取りやすい相手から盗り、その相手を亡き者にして平気。そんな人はどうやってできたのだろう。
何度も連載を読み返して飽きない。
さて、最近アップロードした動画です。週末、ぜひご覧ください。