石田衣良さんの小説
2007年 12月 04日
石田衣良さんの作品だ。
週刊新潮の石田さんの小説の主人公がきっかけ。
若い女にうつつを抜かして全てを失っていくうかつな中年男に対して
毎週毎週、私はまるで身近な友達に言うように「バッカだなあ!」と
しょっちゅう舌打ちしていた。
次の週も次の週もそのバカな主人公に舌打ちするために私は週刊新潮を5回くらい続けざまに買ってしまっていた。
で、5回も話を聞いたら充分だよ、と勝手に顛末を予想してしまい、急激に週刊新潮を買う情熱を失ってしまった(一時的なものだと思うが・・・)。
石田さん、どうしてくれるよ!
そんな気持で数ある石田作品の文庫から自分に合いそうなのを選んだ。
一気に読めた。
話の結末はすれっからしの読者である私には、すぐに察しがついてしまう(何しろ、職業は予想屋なのだから!)。
が、結末は分っているのに途中で読むのをやめることができない。
なぜだろうな?
しばらく考えてわかったことがある。
どうしてこの作家は人をこうも優しく描いてあげられるんだろうってことだ。
私ならもっとこう描く、と思う箇所が多々ある。石田衣良さんは分っているくせにどうして、そうは描かないのだろう?
絶対、そう描いたほうが迫力があるのに。
その描写がないことを惜しく思うとき、ふと気がつくのだ。
自分の中にある人に対する苦々しい思いや憎悪、嫌悪、怒り、嘲笑、侮蔑のあまりの激しさに。
なぜ、自分にそんな思いが宿っているんだろう?
これにとても不思議な気がする。
いつから、どんな理由で私はそんな感情を人に持つようになったのだろうと。
なにが私をそこまで怒らせるのか? と。
これには不思議な気がした。この発見は実のところ480円の文庫なのに文章の行間からマジシャン・セロがダイヤモンドの実物を出してくれたくらいのもうけもの、って気がした。
彼の描く人間はもっと丸い。暗くて、でも、体の末端が月の光色に発光している。そして、一ミリか二ミリくらい、地から浮いているような気がする。
村上龍・・・。
いや、似ている様で違うなあ。広告の世界の人らしいにおいはところどころに感じるけれど。
この人の持ち味は月のような優しい光・・・。
将来、きっともっと不思議な月明かりに浮かび上がる優しい風景や群像を描く人だと思った。
石田さん、ありがとう。久しぶりに本を最後まで退屈しないで読めたことはうれしい!
週刊新潮のほうも引き続き買いますね!
by yoshi-aki2006 | 2007-12-04 03:57 | アンテナ | Comments(3)
石田さんでした。